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血管性認知症とは?ご家族が知っておきたい知識や対応を解説
ご家族が、脳梗塞や脳出血を経験された後「以前と少し様子が変わった」「もの忘れが目立つようになった」と感じることはありませんか?
大切なご家族の変化に、戸惑いや不安を感じておられるかもしれません。それは、血管性認知症と呼ばれる状態かもしれません。
血管性認知症には、さまざまな症状がありますが、正しい知識を持って対応することで、ご本人もご家族も穏やかに過ごせる時間を増やせます。
この記事では、血管性認知症の症状や原因、再発予防のポイント、そしてご家族がどのようにサポートしていけばよいかを分かりやすく解説します。
血管性認知症とは?
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管トラブル(脳卒中)が原因で起こる認知症です。アルツハイマー型がゆっくりと進行し、物忘れから始まることが多いのに対し、血管性認知症は脳卒中をきっかけに比較的急に発症したり、段階的に状態が変化したりすることがあります。
また、脳のどの部分がダメージを受けたかによって、現れる症状が大きく異なるのも特徴です。血管性認知症は、認知症全体の約20%を占めており、男性に多く見られる傾向があります。
【参考】公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「 脳血管性認知症 」
血管性認知症の主な症状について
血管性認知症では、記憶障害や認知機能の低下が見られます。これらは、他の認知症にも共通する症状です。
血管性認知症の症状は、脳のダメージを受けた場所や範囲によって異なります。ここでは、主な症状や特徴を4つ紹介します。
認知症の特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「 認知症とはどんな病気?原因・症状から必要なケアや予防法についても解説 」
できる・できないが入り交じる
血管性認知症において特徴的なのは「まだら認知症」と呼ばれる状態です。これは、脳のダメージを受けていない部分の機能は保たれているため、「複雑な計算はできるけれど、感情のコントロールは難しい」というように、できること・できないことが入り交じって現れます。
歩行や嚥下などの変化
脳卒中の後遺症として、体の動きに関する症状が現れやすいのも特徴です。歩行においては、バランスを崩して転びやすくなることがあります。
また、食事の際には、食べ物や飲み物が飲み込みにくくなる、むせやすくなるといった嚥下(えんげ)の変化が見られることもあります。これは、食べ物などが誤って気管に入る誤嚥(ごえん)につながる可能性もあるため、注意が必要です。
このほかにも、手足の麻痺やしびれ、ろれつが回りにくくなる、あるいはトイレの失敗といった変化が現れることもあります。
気分や感情面の変化
脳のダメージは、気分や感情のコントロールにも影響を与えることがあります。「感情失禁」と呼ばれる状態では、ちょっとしたことで急に「泣く・怒る・笑う」など、感情の起伏が激しくなり、自分でもコントロールできなくなることがあります。
意欲低下が見られることもあり、何事に対しても興味や関心が薄れ、自発的な行動が減ったり、無気力になったりします。また、気分が落ち込み、ふさぎ込んだり、悲観的になったりする「抑うつ状態」になることもあります。
大切なのは、こうした感情の変化が本人の性格が変わったのではなく、病気の影響であることを周囲が理解することです。
状態が段階的に変化することも
血管性認知症は、脳卒中が再発するたびに症状が悪化し、その後しばらく状態が安定するという、階段を下りるような経過をたどることがあります。これを「階段状進行」と呼びます。
このように、症状の進行が急激な悪化と安定期を繰り返す点が、他の認知症と異なる特徴です。
【参考】公益財団法人長寿科学振興財団「 脳血管性認知症 」
なぜ血管性認知症になる? 原因と予防のポイント
ここでは、血管性認知症になる原因と予防のポイントを紹介します。
きっかけは脳血管のトラブル
血管性認知症の主な原因は、脳卒中です。脳の血管が詰まったり破れたりすると、脳の神経細胞に酸素や栄養が届かなくなり、機能が低下します。
その結果、さまざまな脳の働きに支障が出てしまうのです。本人も気づかない小さな脳梗塞が積み重なって発症することもあります。
高血圧や糖尿病と深い関係
脳卒中の主な危険因子として、以下の生活習慣病が挙げられます。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(高コレステロール血症)
これらの病気は、脳卒中のリスクを高めます。よって、生活習慣病を予防・管理することが、血管性認知症を防ぐ上で重要なのです。
【参考】公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「 脂質異常症と認知症予防 」
今日から実践!予防のためにできること
血管性認知症の進行や再発を防ぐためには、脳卒中の危険因子を減らすことが重要です。
バランスの取れた食事と適度な運動
塩分や脂肪分、糖分の摂りすぎに注意し、野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。
また、ウォーキングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣を持つことも大切です。適度な運動は血行を促進し、生活習慣病の予防・改善が期待できます。
禁煙、お酒はほどほどに
喫煙は、血管を傷つけ、動脈硬化を促進します。禁煙は、脳血管障害のリスクを大きく減らせます。また、過度のアルコール摂取は血圧を上げるため、血管に負担が掛かります。お酒は適量を守るようにしましょう。
定期的な健康診断と服薬管理
高血圧や糖尿病などの持病がある方は、定期的に医療機関を受診し、医師の指示に従って治療を継続しましょう。処方された薬は、自己判断で中断せず、正しく服用します。
また、定期的に健康診断を受け、血圧や血糖値、コレステロール値などをチェックすることも大切です。
【参考】厚生労働省「 みんなで知ろう! からだのこと 」
血管性認知症の診断と治療について
ここでは、血管性認知症の診断と治療について3つを紹介します。
気になる変化があれば専門医へ相談を
もの忘れや身体機能の変化など「いつもと様子が違う」と感じることがあれば、まずはかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて、もの忘れ外来や精神科などの専門医を紹介してもらうことも可能です。
早期に相談することで、原因を特定し対応できます。診断では、症状や生活状況の聞き取り、認知機能のテスト、頭部のMRIなどの画像検査が行われます。
薬物療法による症状コントロールと再発予防
血管性認知症そのものを根本的に治す薬は、残念ながら現在のところありません。しかし、脳卒中の再発を予防するための血液を固まりにくくする薬や、高血圧・糖尿病などをコントロールするための薬物療法は大切です。
また、抑うつや意欲低下、幻覚などの症状(BPSD)に対して、症状を和らげる薬が処方されることもあります。
リハビリテーションによる状態改善
血管性認知症の治療において、リハビリテーションは重要です。リハビリテーションは、ご本人が持っている能力を最大限に活かし、低下した機能を補いながら、質の高い生活を送れるようにサポートします。
ご本人の状態に応じて、理学療法士による歩行訓練や筋力トレーニング、作業療法士による食事や着替えといった日常動作の練習や趣味活動、言語聴覚士による会話や飲み込みの訓練などが行われます。
リハビリテーションを継続することは、ご本人の自信回復や意欲の向上にもつながるのです。
【参考】国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「 意外と身近な血管性認知症 」、公益財団法人長寿科学振興財団「 脳血管性認知症 」
ご家族が対応する際に押さえておきたいポイント
ここでは、ご家族が対応する際に押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
病気の特徴を理解する
血管性認知症の特徴を理解することが大切です。この病気では、「できること・できないこと」が混在したり、感情のコントロールが難しくなったりすることがあります。
このような症状に、ご家族は戸惑いや大変さを感じることもあるでしょう。
しかし、できないことを責めたり、感情的な言動に反応したりせず、「これは病気の影響なのだ」と受け止めるように努めることで、ご家族の負担が軽くなる場合があります。
安心できるコミュニケーションのコツ
ご本人と話す時には、急かさず、ゆっくり、はっきりとした口調で話しかけましょう。一度に多くの情報を伝えようとせず、内容は簡潔に、分かりやすく伝えるのがポイントです。
ご本人の話に耳を傾け、否定せずに気持ちを受け止めます。事実と異なる場合にも、間違いを強く指摘するのではなく、さりげなく話題を変えたり、肯定的な言葉を選んだりするのも大切です。
認知症のご家族への対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「 認知症の家族への対応方法は?穏やかに過ごすためのコツを解説 」
安全に暮らせる環境づくり
血管性認知症の症状として、もの忘れや歩きにくくなる場合があります。転倒や事故を防ぐために、生活環境を見直しましょう。
具体的には、以下のような対策が挙げられます。
- 手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材への変更
- 部屋を明るくし、整理整頓を心がける
- 火の元の安全確認(IHコンロへの変更やガス栓の確認など)
以上のように、ご本人が安心して過ごせる環境を整えることが大切です。
リハビリテーションや活動を生活に取り入れる
専門職による訓練だけでなく、日常生活の中にリハビリテーションの要素を取り入れることも重要です。
- 一緒に散歩する
- 洗濯物たたみや食器拭きなど、手軽にできる家事を手伝ってもらう
- 計算ドリルや塗り絵など、興味を持てる作業を行う
- 音楽鑑賞や読書を楽しむ
ご本人の趣味やペースに合わせて、楽しめることを見つけましょう。体を動かしたり、頭を使ったり、社会とのつながりを持ったりすることが、心身機能の維持につながります。
相談窓口や利用できるサービスを活用する
介護は、ご本人にとってもご家族にとっても大きな負担となることがあります。しかし、決してひとりで抱え込んではいけません。さまざまなサポートを上手に活用していくことが大切です。
身近な相談窓口として、地域包括支援センターがあります。高齢者の暮らしに関する総合的な窓口であり、介護保険サービスのことなど、幅広い相談に乗ってくれます。介護保険の申請を代行してもらうことも可能です。要介護認定を受けた場合には、介護保険サービスを利用できます。
介護保険の申請については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
→「 初めての介護保険申請ガイド:手続きから利用開始までの流れ 」
まとめ
この記事では、血管性認知症について解説しました。血管性認知症は、脳卒中がきっかけとなり、できること・できないことが入り交じったり、体の動きや感情面に変化が現れたりする特徴があります。
ご家族が対応する際に、押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- 血管性認知症の特徴を理解して対応する
- 再発予防のため、生活習慣病の管理や禁煙を心掛ける
- 環境づくりを心がけ、日々の生活にリハビリテーションを取り入れる
- ひとりで抱え込まず、地域包括支援センターなどのサポートを活用する
認知症と診断されても、正しい知識を持って対応し、周囲のサポートを受ければ、ご本人もご家族も穏やかな生活を送ることが期待できます。
しかし、ご家族がどれだけ献身的にサポートし、介護保険サービスを利用しても、在宅生活に限界を感じてしまうことがあるかもしれません。そんな時には、専門的なケアや24時間の見守り体制が整った施設での暮らしを検討することも選択肢のひとつです。
決してひとりで抱え込まず、ケアマネジャーや施設の専門スタッフにご相談ください。
この記事が、血管性認知症への理解を深め、ご家族の負担を少しでも軽減するきっかけとなれば幸いです。
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