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前頭側頭型認知症とは?特徴や接し方をわかりやすく解説
「親の性格が変わってしまった気がする」「どう接したらいい?」
そんな悩みや戸惑いを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
「認知症」と聞くと、「もの忘れがひどくなる」というイメージを持つ方が多いでしょう。しかし、認知症にはさまざまなタイプがあり、なかには性格や行動の変化が目立つタイプもあります。その一つが「前頭側頭型認知症」です。
性格が変わってしまったように感じ、ご家族が強いストレスや混乱を覚えることも少なくありません。この記事では、前頭側頭型認知症の症状や接し方のポイント、利用できる支援などについて、分かりやすく解説していきます。
前頭側頭型認知症とは?
まずは、前頭側頭型認知症がどのような病気なのか見ていきましょう。具体的には、以下の3つです。
- 前頭側頭型認知症の概要
- 発症年齢と発症率
- アルツハイマー型認知症との違い
それでは、順番に解説していきます。
前頭側頭型認知症の概要:脳の機能が低下する
前頭側頭型認知症は、脳の「前頭葉」と「側頭葉の前方」が少しずつ萎縮することで発症します。前頭葉と側頭葉の働きは、以下の通りです。
◯前頭葉の主な役割
- 物事を考える
- 感情をコントロールする
- 社会のルールに沿って行動する
◯側頭葉の主な役割
- 言葉を理解する
- 記憶を整理する
- 人物や物を認識する
以上のように、脳の機能が低下することで、感情をうまくコントロールできなくなったり、社会的なルールを守れなくなったりするなどの症状が現れます。
【参考】公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「 前頭側頭型認知症 」
発症年齢と発症率:50〜60代で発症することも多い
前頭側頭型認知症は、比較的若い年代で発症することが多いのが特徴です。50〜60代で症状が出始めるケースが多く、高齢者よりも「働き盛りの世代」に見られることがあります。
若年性認知症の基礎疾患の内訳としては、全体の約9.4%となっています。働き盛りや子育て世代で発症することもあり、ご本人だけでなくご家族の生活にも大きな影響を与える病気といえるでしょう。
【参考】厚生労働省「 若年性認知症 実態調査結果 概要 」
アルツハイマー型認知症との違い:もの忘れは目立ちにくい
認知症といえば「アルツハイマー型認知症」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、前頭側頭型認知症は、初期症状に大きな違いがあります。
アルツハイマー型認知症では、「もの忘れ(記憶障害)」が最初に目立ちます。たとえば、同じことを何度も尋ねたり、約束を忘れてしまったりといった症状です。
一方、前頭側頭型認知症では、初期には、もの忘れはあまり目立たず、それよりも「性格が変わった」「行動が極端になった」といった変化が現れます。周囲の状況を気にせず突飛な行動をとったり、感情の起伏が激しくなったり、同じ行動を繰り返すこともあります。
以上の特徴から、初期の段階では「うつ病」や「更年期障害」、単なる性格の変化と誤解されることも多いです。認知症と気づかれるまでに時間がかかり、受診や対応が遅れてしまうケースもあります。
アルツハイマー型認知症については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→「 アルツハイマー型認知症の原因とは?知っておきたい予防と対応法 」
前頭側頭型認知症に見られる特徴的な症状
前頭側頭型認知症には、どのような症状が見られるのでしょうか。ここでは、代表的な症状を3つご紹介します。具体的には、
- 人格変化・感情のコントロールが難しくなる
- 反社会的行動・マナー違反
- 言葉が出にくくなる
それでは、順番に解説していきます。
人格変化・感情のコントロールが難しくなる
前頭側頭型認知症の特徴的な症状のひとつが、「まるで人が変わってしまったような人格の変化」です。これは、感情や理性をコントロールする前頭葉の機能が低下することに深く関係しています。
具体的には、以下のような変化が見られます。
- 怒りっぽくなる
- 感情表現が乏しくなり、冷たい印象を持たれる
- 意欲が極端に低下し、身の回りのことに無関心になる
これまで穏やかだった人が急に怒りっぽくなったり、配慮が薄れたように感じられたりすると、長年連れ添ってきたご家族は「まるで別人のようになってしまった」と大きなショックを受けてしまうことがあります。
反社会的行動・マナー違反
前頭葉の働きが低下するため、社会的なルールやマナーを守る意識や自制心が弱まり、周囲から「非常識」「反社会的」と見られてしまうような行動が現れることがあります。
たとえば、以下のような言動が見られることがあります。
- 思うがままに行動したり、言葉にしたりする
- 列に割り込む、公共の場で大声を出すなど
- 万引きや信号無視などを平気でする
以上の行動は、悪意があるわけではなく、病気の影響で「してはいけない」という判断や抑制ができなくなっていることが原因です。
そのため、本人の行動を無理に正そうとするよりも「どうすれば穏やかに過ごせるか」「どうすればトラブルを未然に防げるか」という視点で環境を整えることが大切になります。
言葉が出にくくなる(失語症状)
前頭側頭型認知症では、言葉に関する症状も見られます。これは、側頭葉の機能が低下することで起こるとされています。
主に見られるのは、以下のような変化です。
- 物の名前が出てこなくなる
- 言葉の意味が分からなくなる
- 話し方がぎこちなくなる
- 同じ話を繰り返す、内容が乏しくなる
こうした言語機能の低下は、会話のキャッチボールを難しくさせ、ご本人にとっても強い不安や混乱の原因になります。
【参考】厚生労働省「 前頭側頭葉変性症 」
前頭側頭型認知症への接し方と対応ポイント
前頭側頭型認知症のご本人と接する上で、ご家族はどのように対応すればよいのでしょうか。
本人を否定しない対応
前頭側頭型認知症の方の言動には、ご家族から見て驚くようなものもあります。しかし、そうした行動の多くは、ご本人の意志によるものではなく、病気の影響で現れているものです。
つい注意したくなったり、間違いを指摘したくなったりする場面もあるかもしれません。しかし、否定することで、本人の混乱や不安がさらに強くなってしまうこともあります。
まずは「そういう症状なのだ」と受け止め、否定せず、安心できる声かけや態度を意識することが大切です。必要なのは「正そう」とするより「落ち着ける」対応です。穏やかに接することで、ご本人の安定につながります。
感情的にならず、環境を整える
ご本人の情緒が不安定なときほど、周囲の人の対応や環境の変化に敏感に反応しやすくなります。そのため、介護する側が落ち着いて接することが、重要です。もしカッとなりそうになったら、一度深呼吸をする、少しその場を離れるなどして、まずはご家族自身が冷静さを取り戻すことを心がけましょう。
生活環境については、ご本人が穏やかに過ごせるよう、できるだけ静かで落ち着いた空間を整えることが大切です。例えば、テレビの音量を控えめにする、カーテンで強い日差しを和らげるなど、騒音や強い光といった外部からの刺激を減らす工夫をしてみましょう。また、食事や散歩、就寝の時間など、毎日の生活リズムをできるだけ一定に保つことで、ご本人の混乱や不安を和らげる効果が期待できます。
家族自身のストレスケアも大切
介護は、ご家族にとっても大きな負担になります。前頭側頭型認知症は、周囲に理解されにくい症状であるため、孤独感を抱えやすいのも特徴です。
ご家族は「自分だけで頑張らなければ」と考えてしまうことがあります。しかし、介護は、決してひとりで抱え込んではいけません。外部の支援を、積極的に活用しましょう。
たとえば、地域包括支援センターに相談する、デイサービスやショートステイを利用して休息の時間をつくる、家族会に参加して同じ立場の人と話をするなど、選択肢はたくさんあります。自分自身の心と体の健康を守ることが、ご本人へのより良い支援につながります。
【参考】独立行政法人 国立病院機構 菊池病院「 前頭側頭型認知症 ケアのポイント 」
介護保険サービスや施設利用を検討するタイミング
在宅でのケアを続けていても、病状の進行やご家族の状況の変化によって、介護負担がさらに大きくなることがあります。そのようなときは、現在のサポート体制を見直し、より手厚い支援や施設利用を検討することも有効な選択肢です。
ここでは、どのような状況で次のステップを考えるべきか、そしてどのような選択肢があるのかをご紹介します。
在宅介護の限界を感じたら
前頭側頭型認知症の介護では、身体的なケアに加えて、精神的な負担も大きくなりがちです。症状の理解が難しいことや、周囲に相談しにくいなどの要素も、介護者を疲弊させてしまう傾向にあります。
眠れない日が続いたり、体調を崩しやすくなっている場合は、介護負担が限界に近づいているサインかもしれません。また、日々の中で「このままでは続けられない」と感じる瞬間があれば、無理に頑張り続けず、介護サービスなどのサポートを受けましょう。
デイサービス・ショートステイの活用
在宅での介護を無理なく続けていくためには、デイサービスやショートステイといった介護保険サービスの活用が有効です。
ご本人にとって、自宅以外の場所で過ごす時間は、新しい刺激を受けたり、他の人と交流したりする良い機会になります。また、決まった時間に活動することで、生活のリズムを整えることが可能です。ご家族にとっては、介護から少し離れる時間を持つことで、心と体を休められ、気持ちに余裕が生まれるでしょう。
もしかしたら「サービスに頼るのは申し訳ない」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの介護サービスは、ご本人やご家族が、より穏やかに暮らすために設けられた制度です。積極的に活用していきましょう。
介護施設の利用を視野に入れる
症状の進行やご家庭の事情によって、在宅介護が難しくなる場面もあります。そのようなときには、介護施設の利用も一つの選択肢として検討してみましょう。
専門的なケアを受けられる環境であれば、ご本人にとっても、より安心できる生活を送れる可能性があります。また、ご家族も、介護に追われる毎日から少し距離を置くことで、穏やかな時間を取り戻せるかもしれません。
介護施設にはさまざまな種類があり、サービスの内容や費用、受け入れ体制も異なります。まずは、ケアマネジャーや施設スタッフなどに相談しながら、無理のない形で情報を集めていくことが大切です。ご本人やご家族が納得できる選択ができるよう、専門家と一緒にゆっくり考えていきましょう。
介護施設の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「 一覧表ですぐに分かる!介護施設の種類と特徴について解説 」
まとめ:ひとりで抱え込まず、支援を受けながら向き合おう
前頭側頭型認知症では、性格や行動に大きな変化が現れることが多く、ご家族や周囲の方が戸惑いを感じやすい病気です。しかし、こうした変化は、ご本人の意志や性格によるものではなく、脳の病気によって出現しています。
まずは「これは病気が引き起こしていることだ」と理解することが重要です。そして、接し方や環境の調整、介護保険サービスの活用など、できることから少しずつ取り入れていきましょう。
この記事でお伝えした大切なポイントを、以下にまとめます。
- もの忘れよりも性格や行動の変化が目立つ
- 本人を否定しない接し方を心がける
- 介護者自身の心と体のケアを大切にする
- 介護サービスを活用する
- 相談できる相手を持つ
介護では、ご家族がひとりで抱え込まないことがとても大切です。地域包括支援センターやケアマネジャー、介護施設など、頼れる窓口は身近にあります。
この記事を参考に、ご本人とご家族がそれぞれのペースで、穏やかな毎日を過ごされることを心より願っています。
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