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成年後見制度の基本から手続きまで:安心して利用するための知識
「成年後見制度の手続きはどう進めればよいのか」
「利用時に気をつける点は?」
と悩む方も多いのではないでしょうか。
成年後見制度は、判断力が不十分になった場合に、財産管理や生活支援を通して本人と家族を支えるための仕組みです。しかし、具体的な手続きの流れやサポート内容が不明確で、どのように進めればよいか迷うこともあるでしょう。
この記事では、手続きの方法や支援内容、利用時の注意点について詳しく解説します。大切な家族を支えるための参考として、ぜひ最後までお読みください。
成年後見制度とは
成年後見制度は、高齢者や障がいのある方が判断能力を失った際に、安心して日常生活を送れるよう支援する制度です。認知症や知的・精神障がいがある方を対象とし、権利を守りながら財産管理や生活支援を行います。
この制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、法定後見制度では後見人が財産管理や生活保護を担い、任意後見制度では本人が信頼する人と契約を結び支援を受ける仕組みです。これにより、本人の意思を尊重しつつ、地域や家族と協力しながら安心して生活を続けられます。
成年後見制度の種類
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。それぞれについて紹介していきます。
法定後見制度:後見・保佐・補助の違い
法定後見制度は、すでに判断能力が低下した方の権利を守るために、民法に基づいて設けられた制度です。手続きを始める時点で、本人の判断能力が不十分であることが前提になります。
この制度には、判断力の低下度合いに応じて「後見」「保佐」「補助」の3つのタイプがあり、それぞれに応じたサポートが提供されます。
| 補助 | 補佐 | 後見 | |
|---|---|---|---|
| 対象となる方 | 判断能力が不十分な方 | 判断能力が著しく不十分な方 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 |
| 成年後見人等が同意または取り消すことができる行為 | 申立により裁判所が定める行為 | 借金、相続の承認など、民法13条1項記載の行為のほか、申立により裁判所が定める行為 | 原則としてすべての法律行為 |
| 成年後見人等が代理することができる行為 | 申立により裁判所が定める行為 | 申立により裁判所が定める行為 | 原則としてすべての法律行為 |
成年後見人、保佐人、補助人は家庭裁判所によって選ばれ、本人の利益を守る立場から、契約の代理や不利益な契約の取り消しなどを行い、本人を支える役割を担っています。
出典:家庭裁判所「 成年後見制度 利用をお考えのあなたへ 」(P.6)
任意後見制度:自分で後見人を選べる制度
任意後見制度は、将来の判断力の低下に備え、あらかじめ信頼できる後見人を選んでおく制度です。判断能力が十分にあるうちに、支援内容や後見人を自由に決められる点が特徴です。
手続きは、公正証書を通じて任意後見契約を結び、後見人の役割や支援の範囲を明確にします。実際に判断力が低下した際に、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その時点で契約が発効します。この仕組みにより、本人の意思を尊重した支援を受けることが可能です。
成年後見制度を利用する人は増加している
成年後見制度の利用者は年々増加していますが、潜在的なニーズに対して普及はまだ十分ではないとされています。2023年の裁判所データによると、制度の利用者は約25万人であり、約470万人とされる認知症患者数に対してわずか約5.3%にとどまっているのです。
成年後見関係(後見開始、保佐開始、補助開始および任意後見監督人選任)の申立件数は40,951件となり、前年から約3.1%の増加が見られます。今後、認知症や独居の高齢者はさらに増えると予想され、成年後見制度の必要性はますます高まっていくでしょう。成年後見制度は、法的な枠組みの中で本人の生活を支援できる仕組みとして、今後さらに重要な役割を果たすことが期待されています。
出典:・最高裁判所事務総局家庭局「 成年後見関係事件の概況―令和5年1月~12月 」(P.1、P.13)
・NHK「 認知症の高齢者 2040年に推計584万人余 どう支えるか課題 」
成年後見制度を利用する際の注意点
ここでは、成年後見制度を利用する際の注意点を5つ紹介します。具体的には、
- 選任は必ずしも認められるとは限らない
- 行える範囲に制限がある
- 一度選任されると途中で辞められない
- 専門職が後見人の場合、報酬が発生する
- 定期的な家庭裁判所への報告義務がある
の5つです。それでは順番に解説していきます。
選任は必ずしも認められるとは限らない
成年後見制度では、申立人が希望する人が必ず後見人に選ばれるとは限りません。最終的な決定権は家庭裁判所にあり、候補者の適性や公平性を基準に、誰が最も本人の利益を守れるかを判断します。
特に、高額な財産を持つ場合や経済的な利害が絡む場合、親族ではなく司法書士や弁護士などの専門家が選任されることも多いです。社会福祉士や行政書士なども後見人として関与するケースが増えており、後見業務の担い手も多様化しています。このように、家庭裁判所は公平で中立な立場から、本人にとって最適な後見人を選定するよう努めています。
行える範囲に制限がある
成年後見制度における後見人の権限は、本人の財産を保護することに限定されています。そのため、後見人が本人の財産を自己や家族の利益に使用することは認められず、資産運用や相続税対策のために生前贈与や投資を行うことも禁止されています。
さらに、不動産や保険の購入なども制限の対象です。このように、後見人には本人の利益を最優先に考え、財産を守る役割が求められています。
一度選任されると途中で辞められない
成年後見人として選任されると、原則として職務は本人が亡くなるまで続きます。途中で辞任するには「正当な理由」が必要で、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
たとえば、後見人自身の健康が悪化した場合や、海外赴任や家族の介護が必要になった場合などが、辞任の理由として認められることがあります。ただし、本人の判断能力が回復しない限り、後見制度を中断するのは難しく、後見人には長期的な支援を担う可能性が高くなります。
専門職が後見人の場合、報酬が発生する
弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選ばれると、報酬の支払いが発生します。報酬額は、家庭裁判所によって決められ、本人の財産の状況や後見の内容によって異なります。
また、後見が長期にわたると、支払う報酬も増えていくため、継続的な費用負担が必要です。専門職を後見人に選任する際には、費用面も考慮に入れて計画を立てましょう。
定期的な家庭裁判所への報告義務がある
後見人は、家庭裁判所へ定期的に報告を行う義務があります。本人の財産状況や収支の詳細を記載した報告書を提出し、財産管理が適切に行われているかが確認されます。この報告によって、後見人が公平に本人を支援しているかを見極める仕組みが整えられているのです。
成年後見制度の手続き方法を解説
ここでは、成年後見制度の手続きについて紹介します。法定後見と任意後見に分けて、それぞれ解説していきます。
法定後見の手続き
申立てを行うのは、本人や配偶者、四親等内の親族、または市区町村長など、本人の保護に関わる人々です。申立は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ行います。
申立後、裁判所が本人の状態や支援の必要性を審査し、適切な支援の形(後見、保佐、補助)を判断します。後見人が選任されると、財産管理や日常生活のサポートが開始されます。
任意後見の手続き
本人が信頼する相手を後見人として選び、どのような支援を任せるかを公証役場へ届け出ます。この契約は、公証人が作成する公正証書によって正式なものとなります。判断力が低下した際には、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その時点で契約が発効する仕組みです。
参考:家庭裁判所「 成年後見制度 利用をお考えのあなたへ 」
成年後見制度の代わりに利用できる制度
ここでは、成年後見制度の代わりに利用できる制度について2つを紹介します。
家族信託(民事信託)
家族信託(民事信託)は、判断能力が十分なうちに、自身の財産を信頼できる家族に託して管理をお願いする仕組みです。成年後見制度とは異なり、契約内容を柔軟に設定できるため、資産管理の自由度が高い特徴があります。
また、家族間の契約であるため、報酬が発生しない点もメリットです。ただし、本人が認知症になるなど判断力が低下した後では契約を結べないため、早めの準備が重要です。成年後見制度と家族信託にはそれぞれ異なる特徴があるため、本人の状況に応じて適切に選択することが求められます。
参考:法務局「 家族信託とは? 」
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は、判断能力が低下している方が、安心して日常生活を送れるよう、地域の社会福祉協議会が行う支援サービスです。認知症高齢者や知的・精神障害のある方で、生活に必要な情報の入手や意思表示が難しい方を対象としています。
支援内容は、以下の通りです。
- 定期訪問による生活変化の察知
- 日常生活費の管理
- 福祉サービスの利用援助
- 住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等
利用希望者は社会福祉協議会へ申請し、支援計画を立てたうえで契約を行います。利用料は1回あたり約1,200円で、生活保護受給世帯は無料です。
参考:厚生労働省「 日常生活自立支援事業 」
まとめ
成年後見制度は、判断が難しくなった際に財産管理や生活支援を通じて、本人や家族をサポートする仕組みです。ただし、一度利用を始めると、基本的には生涯にわたって続けることが前提となります。
この制度は、本人の権利を守ることを目的としていますが、支援の名のもとに一部の権利が制限される面もあるため、その点を理解しておくことが大切です。将来に備え、いざというときに冷静に対応できるよう、制度についてあらかじめ理解を深めておきましょう。
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