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2026.09.25

介護離職とは?年間10万人が直面するリスクと続けるための対策

介護離職とは?年間10万人が直面するリスクと続けるための対策

「親の介護で、仕事を辞めるしかないかも…」

そんな悩みをお持ちではありませんか?

介護離職は、年間約10万人が直面すると言われています。しかし、早めに制度や受けられるサービスを知れば、仕事を続けることも難しくありません。

本記事では、介護離職の実態とリスクを整理し、介護休業や時短勤務などの公的制度を解説しています。また、特養や有料老人ホームなどの特徴や、実際の事例も紹介します。仕事と介護の両立を検討している方は、最後までお読みください。

介護離職とは?年間10万人が直面する現実

ここでは、介護離職の基本知識について3つを紹介します。具体的には、

  • 「介護離職」の基本的な意味
  • データで見る介護離職の現状
  • 介護離職の主な理由

 

の3つです。それでは、詳しく解説していきます。

「介護離職」の基本的な意味

「介護離職」とは、親や配偶者など身近な家族の介護に専念するため、それまで続けてきた仕事を辞めることを指します。多くの場合、本人が望んで選んだわけではなく、介護と仕事の両立が難しくなり、やむを得ず離職に至るケースがほとんどです。

特に、40~50代といった働き盛りの世代に多く見られます。この世代は、会社にとっても重要な役割を担う存在であることも多いです。キャリアを中断することは、企業にとっても貴重な人材を失うことにつながります。

データで見る介護離職の現状|離職者の数と年齢層

介護離職は、誰にとっても身近な問題です。総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、2022年の一年間で介護を理由に仕事を辞めた人は約10万6,000人にも登ります。

2017年の調査から約7千人増えており、状況が深刻化していることは明確です。内訳を見ると、約8万人が女性で、全体の75%以上を占めています。今もなお、介護の担い手が女性に偏っている現実が浮き彫りになっています。

年齢別では50代の離職が最も多く、この世代は企業にとって経験豊富で重要な人材です。介護離職は、家族の問題にとどまらず、社会にも大きな影響を与えています。

【参考】総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」(P.28)

介護離職の主な理由|なぜ仕事を辞めるしかないのか

多くの人は、本当は仕事を続けたいと思っています。それでも離職を選ばざるを得ない背景には「勤務先の問題」が大きく関わっていることが少なくありません。

仕事を続けられない理由は2つあります。一つは、介護休業などの制度自体が十分に整っていない「制度の壁」です。もう一つは、制度があっても使いにくい雰囲気が漂う「職場文化の壁」です。

◯仕事を辞める理由となった勤務先の問題(複数回答)

  • 勤務先に介護休業制度が整備されていなかった:63.7%
  • 支援制度があっても利用しにくい雰囲気だった:35.4%

 

制度があるだけでは不十分で、職場の理解や柔軟な対応がなければ、介護と仕事を両立することは難しいのが現実です。

【参考】厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(P.148)

介護離職の前に知るべき3つの大きなリスク

ここでは、介護離職について知っておきたいリスク3つを紹介します。具体的には、

  • 経済的なリスク
  • 精神的なリスク
  • 介護される側のリスク

 

それでは、順番に解説していきます。

経済的なリスク|収入減と再就職の壁

介護離職は、金銭的な負担が重くのしかかり、生活への影響も避けられません。仕事を辞めれば毎月の収入は途絶え、同時に厚生年金の保険料を納めなくなるため、将来の年金額も減ってしまいます。

さらに介護が一段落した後の再就職は難しく、たとえ仕事に戻れても収入が大幅に下がることが少なくありません。実際に、厚生労働省の「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握調査」によると、介護離職者のうち約67%が「経済的な負担が増えた」と回答しています。

※在宅介護の費用について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【参考】厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(P.153)

精神的なリスク|社会的孤立と心身の疲弊

仕事は収入を得るだけでなく、社会とのつながりや自分の役割を実感できる大切な場でもあります。介護離職によって、社会との接点を失うと、孤立感が強まり、精神的に追い詰められることも少なくありません。

社会的な肩書きを失い「介護をする人」という立場に縛られることで疎外感は深まります。また、昼夜を問わず続く介護は、大きな精神的負担になります。調査では、離職者の6~7割が「精神的・肉体的な負担が増えた」と回答しており、中には介護うつを発症してしまうケースもあるのです。

【参考】厚生労働省「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(P.153)

介護される側のリスク|共倒れの可能性

介護離職は、介護者本人だけでなく、介護を受けるご本人にとっても大きな影響を及ぼすことがあります。収入が途絶えれば、経済面の影響から、必要な介護サービスを十分に利用できなくなり、結果的にケアの質が下がってしまう可能性も否定できません。

さらに、介護者が心身共に疲れ切ってしまうと、思わぬトラブルや虐待につながる危険もあります。つまり、介護離職は「共倒れ」という最悪の事態を招きかねないのです。

必要なのは、全てをひとりで抱え込むことではなく、就労を続けて家計の安定を保ちながら、介護サービスや専門職と協力して支える姿勢です。それこそが、ご家族全員の穏やかな生活を保つための「親孝行の形」と言えます。

仕事を辞めずに済む!介護離職を回避する公的制度

ここでは、介護離職を回避するための公的制度を紹介します。

  • 介護休業制度
  • 介護休暇制度
  • 時短勤務・業免除
  • 介護休業給付金

 

それでは、順番に解説していきます。

まとまった休みが取れる「介護休業制度」

介護離職を防ぐために設けられている代表的な仕組みが「介護休業制度」です。これは、ご自身が介護を行うだけでなく、今後の介護体制を整えるための休業として活用できます。

例えば、ケアマネジャーと介護計画を相談したり、ご家族で役割を話し合ったりするための時間として利用しましょう。

要介護の家族1人につき通算93日まで取得でき、最大3回に分けて休めるのも特徴です。離職という選択をする前に、この制度を使って一度立ち止まり、落ち着いて介護と仕事を両立する方法を考えましょう。

【参考】厚生労働省「介護休業」

年に5日まで休める「介護休暇制度」

介護休暇制度は、介護で生じる突発的な用事に対応できる休暇制度です。長期間の休業ではなく「一時的な休暇」として活用できます。

例えば、以下のようなケースです。

  • 親の通院に付き添う
  • 役所で手続きをする
  • 急な介護サービスの調整に行く

 

以上のような短時間の対応にも利用可能です。

時間単位で休めるため、「半日だけ」「数時間だけ」などの取得もできます。対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得可能です。短時間の休みが必要なときは「介護休暇」を活用しましょう。

【参考】厚生労働省「介護休暇」

働き方を調整する「時短勤務」や「残業免除」

介護と仕事を両立するには、日々の働き方を柔軟に変えられる仕組みを知っておくことが大切です。育児・介護休業法では、労働者が申し出れば、勤務時間や働き方を調整できる権利が認められています。

代表的なのは、1日の労働時間を短縮できる「時短勤務」や、自分で始業・終業を決められる「フレックスタイム制度」です。特に覚えておきたいのが「所定外労働の制限(残業免除)」で、申請すれば会社は原則として残業を命じてはいけません。

定時で帰宅できれば、介護や自分の休息のための時間も確保できます。制度を上手に使うことは、介護を無理なく続けていくために欠かせません。

【参考】厚生労働省「短時間勤務等の措置」「所定外労働の制限(残業免除)」

休業中の収入を支える「介護休業給付金」

介護休業を取るときに、多くの人が心配するのが収入です。そんな不安を解消してくれるのが「介護休業給付金」です。

雇用保険に加入していれば、一定の条件を満たすことで休業前の賃金の67%を受け取れます。職場に復帰することを前提とした制度ですが、利用すれば安心してまとまった休みを取得できます。

介護の準備やご家族との話し合いを進めるためにも、この給付金を利用できるかどうかを早めに確認しておきましょう。介護休業と組み合わせて活用することで、介護を無理なく続けられます。

【参考】厚生労働省「介護給付の内容及び支給申請手続きについて」

負担を軽くする具体的な方法|ひとりで抱え込まないために

ここでは、介護負担を軽減するための方法について3つを紹介します。具体的には、

  • 地域包括支援センターとは
  • 介護保険で利用できる在宅サービス
  • 会社の相談窓口や福利厚生も確認しよう

 

それでは、順番に解説いたします。

最初の相談窓口「地域包括支援センター」とは

介護に直面すると「何から始めればいいのか」と戸惑う方も少なくありません。そんなときに、相談すべき場所は「地域包括支援センター」です。

市区町村が設置している公的な相談窓口で、無料で利用できます。センターには、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーといった専門職が常駐し、介護保険の申請方法や利用できるサービス、家族内での役割分担の相談などを一緒に考えてくれます。

必要に応じて医療機関や福祉サービスにつなぐ役割も担っており、まさに地域の介護支援の「司令塔」と言える存在です。まずは、お近くの地域包括支援センターへ電話することから始めましょう。

介護保険で利用できる主な在宅サービス

介護保険を利用すれば、専門職の力を借りて、介護負担を大きく減らせます。ご自宅での生活をサポートしてくれる介護サービスも豊富です。

具体的には、以下のようなサービスがあります。

  • 訪問介護(ホームヘルプ):ヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴の介助、掃除や買い物などの生活支援を行います。
  • 通所介護(デイサービス):日中に施設へ通い、食事・入浴支援や機能訓練を受けられます。ご家族が休息できる時間も確保できます。
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):数日間、施設に宿泊し介護を受けられる仕組みです。冠婚葬祭や旅行、介護者の体調不良などの際に役立ちます。

 

以上のようなサービスを組み合わせて、介護を無理なく続ける環境を整えられます。

※介護サービスの種類について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

会社の相談窓口や福利厚生も確認しよう

公的な制度に加えて、会社独自の支援制度を利用できる場合があります。近年は、優秀な人材の流出を防ぐため、介護支援を重要な取り組みとして位置づける企業も少なくありません。

例えば、社内や外部の専門家による相談窓口を設置し、介護サービスや制度利用に関するアドバイスを受けられるようにしている会社もあります。また、法律で定められた以上の介護休業を認めたり、介護費用の一部を補助したりといった制度を導入している企業も多いです。

テレワークや時短勤務など柔軟な働き方を可能にする取り組みも広がっています。まずは自社の就業規則を確認し、人事部に相談して、利用できる制度があるかを早めに把握しておくことが大切です。

どうしても両立が難しいと感じたら?介護施設という選択肢

さまざまな制度を活用しても、仕事と介護の両立は難しいこともあります。ここでは、介護施設への入居について3つのことを紹介します。

具体的には、

  • 思い込みを捨てる
  • 老人ホームの役割
  • 施設入居にまつわる事例

 

それでは、順番に解説いたします。

「親の面倒は自分が見るべき」という思い込みを捨てる

介護と向き合う中で、仕事との両立がどうしても難しいと感じる場面もあります。そんなとき「施設にお願いするのは親不孝だ」とご自分を責める必要はありません。

「介護は、自宅で行うべき」という考えに縛られると、介護する人もされる人も追い詰められ、共倒れにつながるリスクがあります。

老人ホームは、介護の専門家による24時間体制のケアが受けられる「安心の場」です。施設に介護を任せることは、責任を放棄するのではなく、ご家族全員の暮らしを守る前向きな選択です。その結果、以前のような穏やかな関係を再び築けることもあります。

介護のプロに任せる安心感|老人ホームの役割

介護施設の種類はさまざまで、それぞれ特徴や費用に違いがあります。代表的なのが「特別養護老人ホーム(特養)」で、費用が比較的抑えられる一方、入居条件が厳しく、待機者が多いのが現状です。

一方で「介護付き有料老人ホーム」は、民間が運営し、医療や生活支援サービスが充実しているのが特徴です。高額な施設もありますが、最近では特養と同じくらいの費用で入居できる施設も増えてきています。費用やサービスの内容は施設ごとに異なるため、複数を比較検討することが大切です。

また「住宅型有料老人ホーム」も選択肢の一つです。住宅型は生活の場としての自由度が高く、必要に応じて外部の介護サービスを組み合わせながら暮らせます。自立度が高い方にとっては安心して生活を続けやすい環境であり、将来的な介護の必要に応じて柔軟に支援を受けられる点が特徴です。

ご本人の状態や希望、そしてご家族のサポート体制に合わせて、最適な施設を検討しましょう。

※老人ホームの選び方について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

施設入居がご本人とご家族の「新しい暮らし」につながった事例

ここでは、実際の事例をご紹介します。93歳の女性(要介護3)は、長男さんと二人暮らしでした。

転倒による大腿骨骨折をきっかけに、歩行が難しくなり、認知症の進行も見られるようになります。トイレは何とか自立してできるものの、転倒リスクが高く、夜間に冷蔵庫を開けるなどの行動もあり、長男さんは日々見守りと介助で心身共に疲れ切っていました。

そこで、自宅近くの有料老人ホームへの入所を決断されます。ご本人も入所を望まれ、長男さんは「最期まで自宅で介護すべきでは」と悩まれましたが、面会で穏やかに過ごす母親を見て「任せてよかった」と感じられるようになりました。

長男さんは、高かった血圧が正常に戻るなど、心身の負担が軽減された様子です。今では、施設での面会で穏やかな時間を共有し、以前のように温かい親子関係を取り戻されています。

まとめ|介護離職を決断する前に、あらゆる選択肢の検討を

この記事では、介護離職の現状やリスク、そして仕事を続けながら介護と両立するための方法を解説しました。

介護は突然始まることが多く、誰にとっても「明日は我が身」と言えます。だからこそ、制度や支援の存在を知っておくことが重要です。

それでは、記事の内容を4つのポイントに整理して振り返りましょう。

  • 介護離職の実態を知る:年間約10万人が直面し、特に40~50代の働き盛りに多い深刻な課題です。
  • リスクを理解する:収入が無くなることや再就職の難しさ、共倒れのリスクなど、生活全体に影響します。
  • 制度やサービスを活用する:介護休業や給付金、在宅介護サービスなどを組み合わせることで、介護を続けられます。
  • 施設入居も前向きな選択肢に:特養や有料老人ホーム、住宅型施設などを利用することで、ご家族の生活や関係性を守れる場合があります。

 

介護は「家族がひとりで抱え込むもの」ではなく、社会全体で支えるべきものです。

さまざまなサポートの仕組みを知り、必要に応じて活用しましょう。この記事が、今後の介護を考える上での参考になれば嬉しく思います。

この記事の監修者
北村 昌枝
介護支援専門員

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